クロージングとは、商談の締めくくりとして成約を決定づけるフェーズです。インターネットが普及し、お客様が容易に情報収集できるようになった今、従来の「熱意と人柄」「企業都合の情報」だけでクロージングに至るのは難しくなってきました。
「押しの営業」だけでは限界を感じている人も多いのではないでしょうか。本記事では商談をクロージングに導くテクニックと、信頼される営業担当者となるために注意すべきポイントをお伝えします。
なお、営業部署全体の業務見直しや作業効率アップを目的としたツールとしては、「Sales Platform」がおすすめです。営業リストの作成から営業代行、商談獲得まで一気通貫で支援可能です。
営業におけるクロージングの重要性
クロージングとは、営業活動の最終段階ともいえる重要な局面です。商談に至るまでリードの獲得やアポイント獲得など、多大な手間とコストがかかっていることでしょう。商談を重ねて信頼を得て、いよいよクロージングとなれば、一連の営業活動の「成約率」がはっきりと数字に表れることになります。
リード数が多くてもなかなか成約に至らないのであれば、営業フローに何か問題があるのかもしれません。反対にリード数が少なくても一定の成約数が保てるのならば、その手法を横展開し、営業部全体のスキル向上に役立てられるでしょう。
また、成約率によってコストの課題もはっきりします。例えば、リードナーチャリングなどの見込み客獲得単価が1件あたり5,000円の営業フローでクロージング率が50%であれば、10人成約に必要なコストは10万円です。
これがクロージング率20%となると、必要コストは25万円となります。クロージング率が低くなるほど成約1件あたりに対するコストが必要となり、営業活動全体の「損益」に関わってくるのです。
クロージングの流れ
クロージングの最終目標は「顧客と契約を締結すること」ですが、商談からクロージングへと導くタイミングが重要です。ここを読み間違えると、お客様から「今は結構です」と言われ失注してしまうでしょう。
クロージングへと移行させるタイミングを計るには「テストクロージング」の実施がおすすめです。テストクロージングとクロージングの例文、契約締結の注意点を解説します。
テストクロージング
商談は自社製品の情報を提供すると共に、顧客の温度感を測る場といえます。見込み客は製品・サービスに対して「認知→興味→理解→検討→購入決定」といった心理プロセスで購買行動へと至ります。
「認知=こういうものがあるのか」「興味=もう少し知りたい」といった段階の見込み客へクロージングを迫っても、購入の決断は下せないのです。
また、営業担当が把握すべき顧客情報に「BANT情報」があります。BANTとは、予算(Budget)・決定権(Authority)・需要(Needs)・時期(Time frame)の頭文字をとったもので、提案する製品・サービスがお客様にとってのそれぞれの項目を満たしていなければ、成約はありません。
お客様の温度感とBANT情報を分析したあとに、テストクロージングを実施しましょう。テストクロージングでは本格的なクロージングへ移行させるべきかどうか、契約の意思かあるかどうかを「テスト」します。
テストの結果が思わしくない場合は、再度ヒアリングや提案内容の再構成をして商談を継続しましょう。
【テストクロージング例1】
「お客様が購入したとしたら『こうなるだろうな』とか『こう活用しよう』といったイメージを持てましたか?」
見込み客の「理解」と「需要」を測る質問です。明確なイメージを持てていないようなら、ヒアリングや製品解説を繰り返しましょう。
【テストクロージング例2】
「価格についてはどう感じますか?」
価格に納得しているかを確認する質問です。「ちょっと高いですね」「もう少し安ければ」といった回答を得たら、相場や付加価値を説明しましょう。
クロージング
テストクロージングでの感触が良好であれば、契約の意思表示を得られたと判断してクロージングへと移行します。お客様企業が製品・サービスを導入した場合のシミュレーションや他社事例を伝え、「お客様にとってのメリット」や「成功イメージ」を提示しましょう。
ただし、商談担当者が決定者ではない場合は、社内稟議を通過する必要があります。企業の社内稟議におけるルールや決定者が指摘することの多い懸念点などを確認して、商談担当者と一緒に稟議資料をつくる姿勢で臨みましょう。
クロージングに際して、見込み客が挙げる迷いや不安点は丁寧に解消していきます。特に「もっと安いものは」「もっと良いものは」といった迷いは、ある意味で際限のないものです。
価格に対する不安に対しては、「業界最安値」を提示する手法もありますが、品質に自信があるなら「安いものが良いのなら、弊社ではなく○○社が良いですよ」ときっぱり伝えましょう。続けて、安さを追求する場合のリスクや自社製品の優位性を伝えれば、お客様の迷いを断つことができるでしょう。
【クロージング例1】
「もし今ご決断できないのなら、お断りいただいてもかまいません」
「押しの営業」に慣れているお客様や、あと一押しで決定しそうなお客様に有効な「引くクロージング」です。一通りの説明を終えたあと、お客様が気持ちを話し出すまで沈黙を貫く方法もあります。
【クロージング例2】
「弊社のサービスではAプランかBプランがおすすめです。どちらが気になりますか」
選択肢を提示することで「買うか買わないか」の2択から「どちらを選んだら良いか」へ思考が移ります。お客様に主導権があると思わせながら、自然な形でクロージングに導くことが可能です。
契約締結
契約締結では、契約書へのサイン・押印、電子契約書への署名などを行います。契約書に不備があると信頼感を損ねてしまうため、最後まで気を抜かずに対応しましょう。
話の流れで契約をOKしたお客様は、少しのつまずきですべてを撤回してしまうかもしれません。時間を置くと、お客様側がさらに情報収集を重ね「もっと良いサービスを」と商談が長引く恐れもあります。言葉は乱暴ですが「気が変わらないうちに言質を頂く」のも大切なポイントです。
クロージングを成功させるコツ
クロージングを成功させるには、商談中からの準備とクロージングの展開話法が大切です。お客様に気持ちよく購買・契約してもらうためのクロージングのコツを5つ紹介します。
事前準備を行う
リードの獲得から商談中にも意識しておきたいのが「顧客の課題」です。目に見える課題だけに注力していると本質的な課題を解決できず、成約後に「期待と違った」「他社にすれば良かった」といった感想を抱かれてしまいます。
表面的な困りごとの根はどこにあるのかを探り、自社製品によってどの程度フォローできるのか納得してもらえば、意識のズレを防ぐことができます。
製品の特性や導入後の効果について納得してもらえれば、お客様側から自然と「購入するとしたらどのような手順を踏むのか」「導入時期はいつごろになるのか」など、成約後に関する質問が投げかけられるでしょう。
お客様が導入後をイメージし始めたタイミングは、テストクロージング、ひいてはクロージングに移行しても問題がないサインといえます。お客様の変化を見逃さないよう、適宜テストクロージングを実施しましょう。
顧客に選んで頂く
クロージングのタイミングに気負ってしまい「これがおすすめ」と強く推すと、お客様の気持ちが冷めてしまうリスクがあります。あくまでも主導権はお客様にあると思わせることが、納得感につながります。
選択肢を提示する際には「松竹梅の法則」を取り入れるとよいでしょう。3つの選択肢のうち、高すぎず安すぎず機能面でも程よいものを中央に配置すると選ばれやすいという法則です。
「松」と「梅」には「竹」の良さを引き立てるものを配置すると効果的。それらが必要な機能を備えていれば、アップセルのチャンスにもなります。
商談担当者が製品使用者とは限らないケースもあります。その場合には「現場が楽になる」というメリットだけでは担当者の気持ちは動かないかもしれません。自分のことのように捉えてもらうためには「現場が楽になることで、組織に〇〇の効果がある」といった未来までを提示しましょう。
買わない理由に対する切り返しワードを用意する
クロージングのタイミングでも、商談担当者に迷いがある場合には成約を急がず、何を不安に思っているのか買わない理由を聞きましょう。あらかじめ買わない理由に対する切り返しを用意しておき、その場でスマートに回答できればベストです。
よくある買わない理由には「競合他社も調べておきたい」「費用面が不安」などがあります。
「競合他社も調べておきたい」と言われそうな場合には、提案資料に競合他社を実名で記載しておく、第三者機関の評価を記載しておく、他社が優れている点は素直に認めそれを上回るベネフィットを提示するなどして、自社製品の有意性をアピールしましょう。
「費用面が不安」と返されそうな場合には、お客様の予算構成からの判断とともに、相場感に対する理解も深めてもらう必要があるでしょう。
フルコースのランチをワンコインで提供することはできません。フルコースを求めるのであれば、その価格が設定された背景や技術料なども説明していきましょう。
具体的な費用はクロージングの最後に伝える
お客様の気持ちを商品を検討頂く際に、具体的な費用を先に伝えるのは得策ではありません。
例えば、新しいカバンがほしいとき「予算はこれくらい」と考え値札を見ながら検討すると、その予算内のものしか購入しません。欲しいカバンに対する条件を整理し、色や機能などに対するイメージを持ってから検討すると、多少予算オーバーでも理想的なものが見つかれば、そちらを購入するでしょう。
提案したい製品・サービスについても同様です。お客様の解決したい課題や困りごとを丁寧にヒアリングし、それらを解消できる製品・サービスであれば予算の問題はクローズアップされなくなるのです。
具体的な予算は、お客様の「これがほしい。今これが必要だ」という気持ちの高まりを見極めてから伝えるよう注意しましょう。
「もし仮に」というワードを利用する
クロージングの際には「買いますか、買いませんか」と決断を迫るのではなく、「もし仮に購入するとしたら」と柔らかい言葉を選びましょう。また「もし仮に」と提案することで、「要りません」「お断りします」などの最終的な返答を避けられます。
「もし仮に」と投げかけると「仮に購入するとしても予算が……、上長が……」と現時点の懸念事項を引き出し、最終的な返答がない限り商談を継続させることができます。お客様の懸念事項を一つずつ解きほぐし、納得してもらったうえで進めましょう。
クロージング時の切り返し方法
クロージングの場面であっても、お客様はさまざまな不安から返答をしぶることがあります。ここではクロージング時のお客様の言葉への切り返し方法をお伝えします。
「検討します」と言われた場合
クロージング時によくあるお客様の言葉に「検討します」があります。この言葉だけでは、何について検討したいのかはわかりません。「では検討されましたらご連絡ください」と引き下がるのではなく、お客様が気にかけている事柄を明確にしておきましょう。
例えば「検討したい」の言葉には、さまざまな真意が隠れていると考えられます。
- 商談担当者のみが検討するのか、上長・現場も含めて検討するのか
- 営業担当者が提案した資料以外に検討すべきデータや競合があるのか
- 予算と提案内容のバランスに納得いただけているか
- 納期から逆算して検討時間・返答のリミットはどのくらいか
- 次の予定が迫っているので切り上げたいという意味か
「検討したい」と言われたら再提案のチャンスだと捉えて「気になる点がありますか」「どの条件がクリアになれば契約したいなどございますか」とストレートに問いかけましょう。
「予算がない」と言われた場合
「予算がない」などの言葉を受けても引き下がる必要はありません。どのような判断で「予算がない」と答えたのかはケース・バイ・ケースです。例えば以下が考えられます。
- これまでにない製品・サービスだから、そのための予算がない
- 予算自体はあるが足りない恐れがある
- 予算はあるが、優先度が低いために即導入する必要性を感じない
お客様それぞれの事情に共感を示し解決できるよう努めると、一転して契約に至るケースがあります。
「これまでにないから」という場合、コスト削減や売上向上に貢献できる製品なら、詳細なシミュレーションで金銭的なメリットを提示しましょう。
「予算が足りない」のなら、条件の変更や数量の調整で許容範囲に収められないか、営業側で飲み込める範囲も確認して、今後の関係性を考慮した提案をしましょう。
「必要性を感じない」のなら、導入しない際に考えられるリスクを伝え「これはリスク回避のチャンスだ」と印象づける手法が有効です。
また、類型的な断り文句として予算がないと答えているケースもあります。このケースでは商談を長引かせると印象が悪くなり、「この営業担当とは会いたくない」と思われてしまうことも。別件で提案のチャンスを得るため、脈がないときにはいったん引き下がることも大切です。
クロージングにおける注意点
クロージングは営業活動のファイナルステージであり、営業担当にとって最も熱が入る場面といえるのではないでしょうか。しかし営業側の都合で推し進めては、これまでの営業努力が無駄になってしまうリスクもあります。
クロージングにおける注意点を知り、確実に契約へと至れるよう行動を振り返ってみましょう。
最低限のビジネスマナーを身に付ける
クロージングのテクニックは、商談をスムーズに進めるために身に付けておきたいものです。しかし営業担当としてお客様と相対する場合、テクニック以上に大切なのがビジネスマナーです。
「お客様に不快感を抱かせない身だしなみ」「お客様の時間を尊重する報・連・相」「TPOに合わせた言葉づかい」など、基本的なビジネスマナーを身に付け、自然に実践できるようにしておきましょう
お客様との関係が浅い場合、ビジネスマナーは「誠実な人なのか」「信頼しても良いのか」といった判断に大きな影響を与えます。
「商談に遅刻する」「頼んだ資料を忘れる」「上座・下座を理解しておらず、決裁者に下座を勧める」などの失敗は、ビジネスの内容とは関連がないようですが「この商談に対して真剣ではないのでは」「一般常識のない人とは契約したくない」といったマイナス要因になりえます。
同僚とのロールプレイングでお互いのマナーを確認したり、ビジネスマナー研修を受けたりするなどして、立ち居振る舞いにも磨きをかけておきましょう。
強引なクロージングで信用を失わないこと
クロージングを急ぐと「ノルマのためか」「急いで売りたい理由があるのだろうか」などと不審感を招き、信用を失ってしまいます。熱意と押しの強さで売れる時代もありましたが、今はお客様の情報収集能力がアップし、適当なことを言っていてはすぐに見抜かれる時代です。
商談の場では、お客様の困りごとに対する共感を表し「課題解決のお手伝いをする」という姿勢をみせましょう。
「この人は我が社の課題に詳しい」「困っている自分の立場をわかってくれる」と信用を得れば、たとえ今の商談が成約に至らなくても次のチャンスが巡ってきます。
顧客の意思決定を否定しない
人は否定されると、敵対感情が湧いてしまうことがあります。顧客と意見が異なるときには言葉選びに気を配り「決して敵対する存在ではないこと」「相手の考えも認めていること」を伝えましょう。
クッション話法のひとつにYesBut法があります。相手の言葉に対して「ですが」「しかし」とすぐに否定するのではなく「そうですよね」「そのお考えもわかります」と一度受け止めてから言葉を続ける話法です。
普段のショッピングでも同行者に服が似合うかを問われたときに、ノータイムで「似合わない」と断言しては険悪な雰囲気になってしまうでしょう。「その色もいいね。だけど、こっちの色の方が似あうよ」「いいデザインだね。でも、今の靴とは合わなそうだ」と相手の意見を肯定してからこちらの意見を伝えると、敵対ではなく連帯感を醸成できるのです。
商材が完全に必要ない場合は時間を奪いすぎない
営業担当者にも売上計画があり、相手をリサーチしたうえでの提案があるでしょう。しかし、商談を重ねるなかで明らかにミスマッチであったり「今は必要ない」と断られたりしたときには、相手の時間を奪いすぎない配慮が大切です。
「次こそはご満足いただける提案を」「もっと詳しくヒアリングさせてください」と食い下がることで道が拓けるケースもありますが、お客様の時間をいただいているという認識を忘れないようにしましょう。
具体的な商談に至らないときには、リードナーチャリングのステップに戻して定期的な情報提供や顔見せを実施し、いつでも対応できる存在であることをアピールし続けることをおすすめします。
自社サービス、競合サービスに詳しくなる
営業担当者は、商談の場でも質の高い情報が提供できる存在であることが求められています。自社サービスについてよどみなく説明できることはもちろんとして、競合サービスとの比較検討データにも詳しくなっておきましょう。
「以前あった製品とはどう違うのか」「B社とはどう違うのか」などの質問を受けるたびに「調べてからお伝えます」「詳しいものに聞いてから回答します」と返答していては、商談のスピード感が失われ他社に奪われる隙となってしまいます。
「それについては資料の……えーと何ページだったか……」などテンポの悪い対応も、商談の温度感を損なうでしょう。
特に相場感については、常に最新情報にアップデートしておくよう注意しましょう。取り扱う製品・サービスによっては、技術革新によりこれまで提供されていたよりも価格帯を抑えられるようになったり、反対に基本機能が増え中心価格帯がアップしたりと、相場感の変化のスピードは激しくなっています。
常にアンテナを張っていなければ、お客様のほうが早く情報をキャッチしているかもしれません。
まとめ
クロージングは営業活動の仕上げの段階ともいうべき重要な局面です。しかし「クロージングは相手の機嫌を損ねそうで苦手」と言う人がいます。及び腰で商談にあたっていては信頼を得られず、お客様の意思が曖昧なままでは具体的な契約に進むことはできません。
商談とは「お客様の事業のお手伝い」だと捉え「この製品なら役立てられる」「このサービスならメリットがある」と、自信を持ってクロージングへあたりましょう。テストクロージングを織り交ぜながら商談を進めれば、決定的なミスマッチとなることを避けられます。
またクロージングの成功率を高めるには、商談中の話法やテクニックを高めることと営業担当者自身の魅力を高めることの両軸が大切です。クロージングのテクニックを自然に取り入れられるよう商談のシミュレーションを重ねたり、ビジネスマナーを身に付けたりしましょう。
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