既存営業とは、取引をしているお客様に新たに自社商品やサービスを提案するなどして、やり取りをする営業です。
お客様へのアポイントを取るところからスタートする新規開拓営業と違い、既に自社商品やサービスを利用しているビジネス関係が構築された顧客をメインに動くので、これから既存営業を始める新人にはハードルが低く、取り組みやすいと言われています。
しかし、いざ顧客に訪問しても何から始めるべきかが分かっていないと、今までに築いた信頼関係が崩れてしまうことになるかもしれません。
既存営業に必要なスキル・適性と知っておくべきコツをご案内します。
既存営業の種類
既存営業の種類は、企業の規模などによって、扱う商品・サービス、組織体制など様々な違いがあります。
大手企業相手の営業
大手企業は建設業、食品など業界の中でも規模や知名度において、上位に入る企業のことを指します。
取引先の大きな得意先を持っていることが多く、しっかりとしたルートの下に営業活動をしやすい環境があります。
大手企業ならではの組織体制がきちんと確立されている反面、マニュアル通りに仕事を進めなくてはならないため先方の担当者が決裁権を持たない場合が多いです。
社内稟議を通すのに時間を取られるなどがあり、合理的な判断をされやすい傾向があるのも特徴です。
大手企業を相手にする場合は、Customer Relationship Management(カスタマーリレーションシップマネージメント / 顧客と良好な関係を構築することを目的とした営業手法)を活用し、戦略的に営業アプローチを行っていく必要性があります。
中堅企業相手の営業
中堅企業は、大手より会社の規模は大きくありませんが、上層部との距離感が近く、トップがオーナーで経営者でもあることが多いので、意思決定までのスピードが早いのも大きな特徴です。
大手企業に比べて、従業員数が少ないため、マーケティングに携わる人員の不足が起こりやすいのがデメリットとしてあります。
ニーズや課題を確認しながら、新たな提案をしていくことが必要です。
小規模企業相手の営業
小規模企業は、製造業で従業員数20人以下、商業・サービス業で5人以下の企業になります。
従業員の少なさと相まって「御用聞き営業」になることが多く、そのために任される業務が多くなり他の仕事に手が回らなくなってしまったり、残業になる場合も多くなります。
「御用聞き営業」はお互いに強い信頼の絆で結ばれているということでもあり、これは大手・中堅にはあまり見られない特徴なので、その点を活かしつつ「お客様視点」で自社製品の魅力を伝え、新たに提案していく必要があります。
また大手のように営業プロセスの明確なマニュアルができていない、企業の資源である「ヒト・モノ・カネ」が圧倒的に少ないこともデメリットとして挙げられます。
オーナー(決裁者)と直接交渉する機会も多いので、例えば購買後間もなく、購入◯カ月目、保証期間終了前など、季節の変わり目、新アイテムの導入など変化に応じてアプローチしていく等の工夫を凝らした手法で企業に寄り添い、企業との関係を継続していくことが営業を行う上でのカギです。
既存営業に向いた人
既存営業は対応方針やルーチーンが決まっていることが多いので営業経験の少ない新人でも比較的取り組みやすい仕事のように思われがちですが、性格などその人の特性によっては、向いている人、向いていない人がいることは事実です。
どんな人に適性があり、求められるのか具体的にご案内します。
誠実な対応ができる人
経営学者ピーター・ドラッカーの「誠実さに欠ける人間は、どんなに知識があり、明敏で、成功していても、(組織)を破壊してしまう」という言葉があります。
既存営業は人と人とのつき合いが基本なので、一方的な意見を押し付けると相手に不信感を持たせ、話を聞いてもらえなくなってしまいます。
まずは相手の話をきちんと聞ける人、そして営業で得た情報や要望を、自社の仕事に関わるスタッフに正確に分かりやすく伝えるコミュニケーション能力が必要です。
長期の付き合いになると、納期などで遅れが出るなど、一度で提供できない状況が発生するかもしれません。
そのような時にも、後日きちんとフォローアップする、問い合わせに丁寧に答える、提供ができていないのに言い逃れをしない等の誠実な対応ができる人に適性があると言えます。
好奇心が旺盛な人
お客様とより良い関係を構築していくためには、仕事上の話だけでなく、時には世間話やプライベートな話をする場合もあります。
取引先の相手と初めてお会いするような場合、場を和ませるために世間話などを挟むこともあるかと思いますが、そのような際に何を話して良いのか分からず気まずい雰囲気になると大事な商談のタイミングさえも失ってしまいます。
そのような状況にならないためにも、日頃から新聞やニュースを見聞する習慣を身につけ話題を豊富に用意しておくことでトークスキルが向上します。 また、会話に合った最新の話題を盛り込めば、お客様から賢い人という印象をもってもらえます。
様々なお客様に話の興味を持ち、好奇心を膨らませる、耳を傾け話が聞ける人はこの仕事をやりやすい傾向があります。
顧客にきちんと向き合える人
既存営業を仕事にする人に一番必要でなおかつ求められるスキルです。築いてきた関係を継続し、さらに深耕させていく大切な役割を担っています。
失礼な対応、いい加減な対応でお客様を怒らせてしまうようなことがあると、慌てて担当者を変えたところで、信頼関係が崩れ取引自体がなくなってしまってからでは返しがつきません。
お客様と真摯に向き合える、もしも何か失敗等があった場合にはきちんと謝罪することができる人が向いていると言えます。
成功するコツはソリューション営業
顧客が今何を必要としていて、どのように解決したいか、その解決法に合ったものを提案することが、成功させるコツです。
新規開拓を無理に行う必要はない
新たな取引先を増やしていくことだけを考えず、既存顧客のお話をもっと深く聞いてみましょう。顧客の課題や問題点に対する解決案を提案することで、既存顧客との間に新しい取引が増えていく可能性があります。
また、そういった顧客のニーズに丁寧に答えていくことで信頼関係も深まります。
既存顧客からの信頼を積み重ねよう
これから既存営業を行っていく新人は、前任者が築いてきた顧客との信頼関係を壊さないようにしなければならないということを考えるべきです。
前任者がどのような形で話を進めていたのか、顧客に対してのアフターフォローの方法などを詳しく聞いた上で、前任者より低い評価をされないように、地道に努力を続けていくことが重要です。
ニーズに合ったソリューション営業
営業手法が似ている「提案営業」は、お客様が今後求めると思われる、自社商品やサービスを積極的に提案し、アップセル(より高いものを買ってもらうこと)やクロスセル(他の商品などを併せて購入してもらうこと)の機会につなげていく方法です。
しかし、この方法は状況や場合によってお客様に「押し付けられている」と感じさせてしまう可能性が高いです。
提案型営業は、お客様の課題に対する解決策(ソリューション)を商品やサービスとセットで販売するという手法です。
営業担当は自社の商品・サービスを売ることが目的ではなく、あくまでもお客様のニーズを満たすことであり、そのニーズに合った提案をして、お客様に納得していただいた上で、商品・サービスを購入してもらうことがゴールとなるのです。
まとめ
知っておくべきコツを理解した上で、既存営業の担当は自分自身のためではなくお客様のために、動けるようになることが基本です。
そして、大切なのは「お客様のことを知り、問題を解決する」ことですので、ヒアリング力をしっかり磨いて、顧客に求められる既存営業のプロを目指しましょう。